ナルシスト集団にかこまれた悲劇
前回の続きです。自衛隊員のみなさんは20代前半の若者たちばかり十数人。
それをまとめるのが25歳くらいの小隊長らしく、一般社会なら主任といった感じの親しみのある地位のようでした。
小隊長はにこやかに答えます。
「なに言ってるんだよ。オレなんか、最近なまってるから、そのうちキミらに抜かれるよ」
A「いやあ、そんなことないっすよ。小隊長の体力にはとてもかないません!」
小隊長「体なんか、ダメだよ。ほら、腹筋が割れなくなっちゃって、まったく情けないもんだよ」
B「そんなことないじゃないですか。ちゃんと割れてますよ」
小隊長「キミらのほうがいい体してるよ。オレも昔はもっとはっきり筋が出てたんだよね。このなかでいちばん、腹筋がないよ、ハハハ」
彼らは自らの裸体をナルシシズムあふれる目線で、うっとりと眺めていました。
そのときの私はといえば……サウナの片隅で、くまのプーさんのようなお腹を気にしながら、がっくりとうなだれるしかないじゃないですか。
私は心の中で泣き叫んでいたのです。
(はっきり言ってくれよ、小隊長!このなかでいちばん腹筋がないのはこのオレだろ!なぜみんな、オレから目をそらす?なぜオレがここにいないような設定で会話する?そんな気遣う素振りはやめてくれ!)
ロダンの彫刻のように精悍な男たちに取りかこまれ、そとに出るに出られなくなった私。
サウナで自らの羞恥心と脂肪を、ひたすら燃やしつくすしかありませんでした。